プロスパイラが語るMIの人材育成効果〜新入社員の早期戦力化の秘訣とは〜

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MI-6広報

MI-6 Public Relations

MI-6広報では、我々のプロダクト・サービスをご活用いただいているお客様の声や、社内外のイベントの様子を発信していきます。miLabの記事を通してMI-6に少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

はじめに

自動車の快適な乗り心地や走行に欠かせない「防振ゴム」のグローバルサプライヤーとして、独自の技術力を世界に展開する株式会社プロスパイラ。“最高の品質で社会に貢献する”という使命のもと、80年以上にわたって培ってきたノウハウを活かし、モビリティ社会の進化を支えて続けています。 

同社では、2022年頃よりマテリアルズ・インフォマティクス(以下MI)導入の検討を開始し、2022年にHands-on MI®、2024年にmiHub®を導入していただきました。その背景と今後の展望について、材料開発部 部長 大迫様、材料開発部 材料設計課 課長 永田様、材料開発部  材料設計課 和田様、加藤様にお話を伺い、インタビュー記事として公開しました。

本記事では、本編で語りきれなかったMIによる人材育成効果に焦点を当てた内容をお届けします。

大迫 章英さんのプロフィール写真

大迫 章英

Akihide Osaku

株式会社プロスパイラ材料開発部 部長

材料開発部の部長を務め、MI-6とのプロジェクトを最初に立ち上げたメンバーの一人。もともとブリヂストンに所属しており、2022年の防振ゴム事業の独立を経てプロスパイラを設立した経緯から、「プロフェッショナル集団」としての技術力の追求と、世界一の防振ゴムメーカーを目指す強い思いを有し、スピード感を持ってMI導入を決定・主導。

永田 武志さんのプロフィール写真

永田 武志

Takeshi Nagata

株式会社プロスパイラ材料開発部 材料設計課 課長

材料開発部 材料設計課 課長を務める。材料設計課では、防振ゴム用のゴム材料として、顧客や市場のニーズに対応するための「配合設計」を担当。MIの有効性を感じ、新しい領域での開発スピードアップと技術的限界のブレイクスルーに可能性を見出し、社内でのMI定着に積極的に取り組む。

和田 江美子さんのプロフィール写真

和田 江美子

Emiko Wada

株式会社プロスパイラ材料開発部 材料設計課

材料開発部に所属し、2025年5月より主にHands-on MI®を活用して原料探索に取り組む。MI導入により、経験や理屈で探すよりも効果的な材料探索ができることに手応えを感じ、今後は獲得した成果の実用化をターゲットとしてさらなるMIの活用に注力している。

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加藤 来人

Raito Kato

株式会社プロスパイラ材料開発部 材料設計課

2024年5月にプロスパイラに中途入社し、同年8月頃からMI業務とプロスパイラの業務を並行して取り組む。現在はmiHub®を使った配合設計を担当。MI指南役として他の研究員にmiHub®の使い方を伝授し、社内でMIを使う人の輪を広げるためにMIを用いた開発業務に尽力している。

進化するゴム材料開発の課題

近年、EV(電気自動車)の普及や車の静音化が進む中で、防振ゴムに求められる要求特性は劇的に変化しています。かつて気にならなかった微振動や音まで抑える必要が出てきており、エンジン周りの耐熱性向上、さらには新興国のインフラ状況に応じた性能対応など、複雑な課題に直面しています。

材料開発部の永田氏は、ゴム材料開発では基本的に各特性がトレードオフであり「Aを良くしようとするとBは良くならない」関係であると説明します。この相反する関係性をどうブレイクスルーして両立していくか、ここが材料技術の最も難しいポイントであると同時に一番面白い部分であると語ります。

限られたリソースの中で、このトレードオフを乗り越えEV向けの新材料をスピーディーに開発すること。そして、技術を磨き「防振ゴムの領域で世界一」を目指すこと。これが、プロスパイラがMIの導入を決断した背景です。

今後10年を勝ち抜く技術力の追求

材料開発部を率いる大迫氏は「これからの10年を考えた時、より競争力の高い技術の確立が必要であり、そのためには新技術への挑戦が不可欠だ」と考えていました。大迫氏はMIについて調査を進め、化学構造や化学品といった本来評価しにくい部分を数字にしていくことができれば、何か新しいものが出てくるのではないか、と感じ本格導入に向け活動を加速しました。

MI導入にあたり同社が求めたのは、配合最適化などの「DX・データサイエンスに近いもの」と、新たな化学構造を持つ原材料を見つける「原材料探索」の、二つの領域について一緒に取り組めるパートナーでした。複数の有名なベンダーを比較検討した結果、コンサルティングやカスタマイズにも対応でき、何よりも圧倒的な熱量を持っていたMI-6との協業を決断しました。

MI活用により開発スピードの劇的向上を実感

MI-6との取り組みはHands-on MI®︎プロジェクトから開始し、初年度はEV用配合最適化に取り組む中で確かな手応えを感じました。

ベテラン技術者による従来手法とMI活用の比較検証を行ったところ、プロフェッショナルである担当者が経験を駆使し、約12回の試行錯誤を経て目標に到達したのに対し、MIを活用したケースでは、実に半分となる約6回で同等のレベルに達したのです。

大迫氏は「これは早いな」と確信した一方、外部とのやり取りにはどうしても時間がかかるという課題も感じていました。この劇的な開発スピード向上を自社に取り込み、自分達でサイクルを回すことができればさらに開発を加速できると考え「社内に取り込み自分たちでやろう」という決断に至ります。これが、データサイエンスの知識がない技術者でも使いやすいシステムとして紹介されたmiHub®を導入するトリガーとなりました。

MIがもたらす人材育成効果

MIの導入は、単に開発効率の向上にとどまらず、プロスパイラに極めて大きな「人材育成効果」という副次的な成果をもたらしたのです。

新入社員の成長:獲得経験とノウハウを効率的に体系化し、早期戦力化へ

miHub®の担当者として指名されたのは、2024年5月に中途入社したばかりの加藤氏でした。永田氏には、経験豊かな技術者が陥りがちな「経験則や固定観念による狭い範囲での最適化」を避けるため、フレッシュな感性を持つ加藤氏に担当してほしいという意図がありました。

そしてMIを活用した取り組みは、加藤氏にとってゴム材料を学ぶ「最良の教材」となりました。加藤氏はMIを通じて防振ゴム開発について学ぶ中で、「目的とするパラメーターに対して、こういう操作をすればこういう挙動をするのか」ということを感覚として掴んでいったと言います。miHub®をExcelやPowerPointのような一つのツールとして日常的に使うことで、「この特性を出したいなら、こういう材料をこう動かせばいい」という配合の勘所を短期間で習得することが可能になりました。

この結果入社からわずか2年足らずで、加藤氏は20年のキャリアを持つベテランの永田氏と配合技術について「対等に議論ができる」レベルにまで成長しました。ベテランがトライアンドエラーを繰り返して何十年かけて身につける知見を、MIが提案する配合を通じて評価・学習するプロセスにより短期間で獲得できたことは、永田氏が「やはりすごい育成効果だな」と高く評価する要因となりました。

社内への波及:議論による視野拡大と自発的な学習意欲

MIによる育成効果は、加藤氏個人の成長に留まらず、社内全体への波及も見られました。

加藤氏は、自身とは別のテーマに取り組んでいた他の材料担当者に対し、miHub®の使い方やMIで何がわかるのかを教える役割を担いました。この相互補完的な協働の結果、担当者のテーマは早期に目標を達成し、実用化につながる基礎配合を開発するという実績につながっています。

MIの活用は「予測→実験→結果解析→議論」というサイクルを生み出しました。加藤氏がmiHub®を使って予測・実験し、その結果を解析して傾向を提示することにより部内で活発な議論が日常的に行われるようになったのです。

加藤氏はMIを活用した活動を「楽しい」と捉えており、それが前向きな取り組みと自発的な学習意欲を引き出す原動力となりました。 MIを介してベテランと若手が技術を掘り下げ、教え合い、議論する風土が生まれたことは、同社の技術力の未来を担う大きな財産となっています。

持続的な技術競争力の確立を目指して

今後プロスパイラは、MI活用を次のステージへと進めようとしています。

永田氏の目標は、MIを開発現場におけるツールとして定着させることです。目の前の顧客ニーズや短納期での緊急対応に対しても、既存データから即座にブレイクスルーのヒントを得ることで、顧客対応力の向上につなげたいと考えています。さらに、miHub®の成功体験を積み上げ、「私がMIの活用を促すのではなく、メンバーが自らツールを自律的に活用する風土」を理想として掲げています。

miHub®の活用を推進する加藤氏は、自身が入社当初にMIを活用して知見を獲得し、他のメンバーとの議論を通じて視野が大きく広がることを実感しました。この経験から「新入社員の教育にMIを活用し、それをきっかけに社内でMIに取り組むメンバーを増やしたい」と語り、MI活用の輪が広がることを期待します。

大迫氏は「我々が取り組む防振ゴム開発の領域で世界一を目指したい」という強い想いを抱いています。具体的にはポリマーの構造から物性を予測する精度を極限まで高め、技術的なトップランナーになることを目標としています。中長期的な技術競争力の確立においてMIの活用を非常に重要な位置付けと考え、共に推進するパートナーとしてMI-6に期待を寄せています。

プロスパイラのMI活用事例は、MI技術が単なる開発効率化ツールではなく、若手技術者の教育を加速させ、組織全体の技術レベルを底上げする起爆剤となり得ることを示しています。プロスパイラは今後も技術の進化を追求し続けます。